【デジこれ06】もっと用例を

デジタル辞書の現在とこれから」第6回は「もっと用例を」。“用例に語らせよう”という話です。

※このブログ連載は、2022年7月の日本電子出版協会(JEPA)セミナー「デジタル辞書の現在とこれから」の内容を、(我ながら呆れるくらい駆け足でしたので)補足しながらまとめなおしたものです。

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書籍版編集で、ページ内でスペース(行数)を確保するのための作業において、用例がスペース的に一番割を食っているという印象をもっています。用例ひとつ丸々削除されたり、きちんと1文だったものが前後詰められてフレーズになったり、人名を短縮形にしたり(William → Bill の類)、エトセトラ、エトセトラ。

デジタルならば、もっと多くの用例が収録できるはず、用例中の省略も最低限ですむはず、と思うのです。国語、英和、和英、それぞれ目的は異なりますが、用例は多いに越したことはありません。

用例が多くとも、デジタル版ではいろんな提示の仕方ができるはずです。

  • 用例部分の折りたたみ(表示/非表示の切り替え)は既に一部で活用されていますね。
  • 個々の用例に与えられた分類や属性を用いて、ユーザの選択などにより適切な順番に再配列したり、まずは優先順位の高いものだけ表示したりすることもできるはずです。
    • 書籍掲載用例→デジタル版追加用例とか
    • 出典付き用例の使用年代順とか(最古例から並べるか、それとも逆か)
    • 文型例、成句・慣用句、連語・コロケーション、作例・使用例、のような構成語の結びつきの確定度による区分とか

用例は多いほどいい、贅沢を言えば辞書コンテンツと用例データベースがひとまとめになっている位が理想なんですが、書籍版編集とは別枠で予算が確保できるかというとかなり厳しいというのが現実です。なので、まずは書籍編集段階で一旦用意した用例を削除したり、一部省略する際に完全に置き換えちゃったりするのをやめませんか? 組版システムに流し込む際に(あくまで版面上で)削除・省略するやり方や、組版データ内でもオリジナル文字列がコメントアウト等の形式で残してあったりすると、デジタル版で活用できます。やや消極的な方法ですが、できることからこつこつと。


【デジこれ07】数で勝負するのはやめよう